2026年09月
今年も「ひとりひとりが貴重な人材 心も体も健やかに みんな生き生き健康職場」をスローガンとして、令和8年度「全国労働衛生週間」(10月1日〜7日)が実施されます。
近年の労働衛生(産業保健)分野の課題をキーワード化すると「ア・メ・リ・カ」と表されます。
ア:アスベスト
メ:メンタル、メタボ
リ:リスクアセスメント、両立支援
カ:化学物質、過重労働、加齢(高齢化)、感染症
労働衛生週間は、これらの課題に対する意識を高め、改善活動を積極的に推進するための重要な機会です。
すべての労働者が心身ともに健康に働き続けられる職場、とりわけ高年齢労働者が安心して働ける環境づくりを進めることが求められています。
高年齢労働者にとって安全な職場は、若い人にとってはさらに安全な職場となります。
1.高年齢労働者には「知恵を借り、手を貸す」
高年齢労働者は「戦力」であり、「お荷物」ではありません。
長年の経験に基づく知識、判断力、統率力などの結晶性能力は、技術伝承や教育において非常に価値があります。
一方で、加齢に伴う心身機能の低下(筋力・敏捷性・視力・聴力等)は、労働災害リスクを高めます。
そのため、作業環境の改善や作業管理など、職場側の配慮が不可欠です。
「高年齢者の労働災害防止指針」や中災防の「エイジアクション100」を活用し、職場の高年齢者対応が整備できているか、衛生週間を機に見直すことが重要です。
2.「人には老後がある」その進化的理由
野生動物には老後がありません。老化すれば生存が難しくなるためです。
しかし人には老後があります。
それは、高齢者がいることが、集団(組織)にとって生存に有利だったからです。
・集団のまとめ役
・子育ての知恵の伝授
・経験に基づく判断
職場における高齢者の役割も同じです。 「年の功」を活かし、技術伝承や教育に力を発揮してもらうことが、組織の力になります。
3.豊臣兄弟の補完関係は、高年齢労働者の価値に通じる
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟」は、秀吉と秀長の補完関係で天下統一を成し遂げた姿を描いています。
兄・秀吉は、大胆な戦略で全体を率いる
弟・秀長は、穏やかで細やかな調整を行い現場を支える
この役割分担が豊臣政権を安定させました。 秀長は50代前半で病没しましたが、もし長生きしていれば豊臣の天下は安泰だったと言われています。
この「補完関係」は、職場における高年齢労働者の価値と通じます。
経験者が現場を支え、若手が大胆に挑戦する。この組み合わせこそが、強い組織をつくります。
4.武田信玄の名言「人は城、人は石垣、人は堀」
武田信玄は上洛の途中で、53歳で病没しました。もしあと10年長生きしていれば、天下はどうなっていたかと言われるほどの名将です。
彼の信念を表す名言が 「人は城、人は石垣、人は堀」 です。
制度や設備が整っていても、それを活かし、守り、改善するのは「人」です。
労働衛生週間は、制度や設備の点検だけでなく、
・管理職と産業保健スタッフの役割確認
・連携の強化(補完関係)
・組織文化の醸成
を行う絶好の機会です。
働く人ひとりひとりが心身ともに健やかであることが、組織の基盤です。
5.健康は歴史を変える力を持つ
豊臣秀長は50代前半で、武田信玄は53歳で病没しました。もし健康で長生きしておれば、日本の歴史は大きく変わっていたかもしれません。
一方、徳川家康は73歳まで生き、260年以上続く徳川幕府の基礎を築きました。
健康は、歴史を変えるほどの力を持つということです。
労働衛生週間を機に、自身の健康や職場の健康課題について、皆で話し合ってみましょう。
労働衛生週間は、制度の点検だけでなく、「人を守り、人を活かす文化」を育てる期間です。
豊臣兄弟の補完関係、武田信玄の「人は城」の精神を生かし、誰もが安心して働ける職場環境を築いていきましょう。
臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)
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