2022年04月
先月は、健康長寿には、若いうちから健康に良い生活習慣を身につけ、継続していくことが大切との話をしました。
健康を維持・増進させることは、一朝一夕にはできませんが、早くから健康のための取り組みを始め、長期的に継続することで達成できます。
現在の生活習慣によって、あなたの10 年後の健康状態が変わるということです。
10年後にも健康でいるためには、今、何をすればよいのでしょうか。
これについては、多くの専門家や担当行政機関からの提案や勧奨があります。
当然、多くの事項は共通していますが、これらを以下に紹介しますので、現状のチェックや今後の生活習慣の見直し・改善の参考にしてください。
これらは、健康確保のために、今やっておくべき生活習慣改善のポイントです。
「まだ先のこと」と思わず、今日から健康的な生活の第一歩を踏み出してください。
身近な小さいことでも続けていくこと(継続)が大切です。
「1無、2少、3多」
先月に少し触れましたが、日本生活習慣病予防協会では、1月23日は語呂合わせで「1無、2少、3多の日」と定め、健康な生活習慣の普及・啓発活動を行っています(当予防協会の勧めは下記の通り)。
「1無、2少、3多」の実践数が増えると、メタボの発症は少なくなるとの調査結果を、日本内科学会(2009)に発表したとのことです(エビデンス)。
1無(いちむ)とは、無煙・禁煙、2少(にしょう)は、少食・少酒、3多(さんた)は、多動・多休・多接のことで、体を多く動かし(多動)、しっかり休養をとる(多休)、多くの人、事、物に接する(多接)等の生活習慣の勧めです。
もう少し詳しく述べると
1無(いちむ)「無煙・禁煙の勧め」・・・タバコは100害あって一利なし
がん、脳卒中、心臓病予防のために、たばこを止めましょう。
「タバコの三悪」は、喫煙によって体内に取り込まれるニコチン、タール、一酸化炭素。
喫煙は、「健康日本21」の中では、特に若年者の喫煙をゼロにするという目標を掲げています。
ニコチン
ニコチン依存を引き起こす原因物質で、間接的に血管収縮作用ももたらします。
糖代謝や脂質代謝に異常を引き起こし、糖尿病や脂質異常症等のリスクを高め、中枢神経系の興奮と抑制が生じ、心臓・血管系への急性影響が生じます。
一酸化炭素
酸素の200~250倍の結合能力でヘモグロビンと結合し、一酸化炭素ヘモグロビンを形成し、血液の酸素運搬機能を妨げ、組織の酸素欠乏を引き起こし、これをカバーするために赤血球が増えた状態(多血症)になり、血栓をつくりやすくなります。
タール
さまざまな発がん物質、発がん促進物質、その他の有害物質(200種類以上)が含まれています。
2少(にしょう)「少食・少酒の勧め」
少食・・・「腹八分目に医者いらず」
昔から上記のように言われ、暴飲暴食を控えることは、身体の機能を健康な状態に維持していく上で非常に重要です。
「食事療法」という言葉がよく生活習慣病で用いられることからも、糖尿病、脂質異常症、高血圧の予防・治療の基本は常に食生活にあります。
常に腹七~八分目、1日の塩分は男性8g・女性7g以下を目標にします。
お腹一杯(満腹)まで食べる習慣をやめ、腹七~八分目くらいでやめるよう心がけましょう。
偏食をせず、よく噛んで、三食を規則正しく食べることが大切です。
最も望ましい組み合わせは、主食と一汁三菜、それに果物、乳製品といわれています。
また「3つの白(塩、砂糖、白米・白パン)を控える」ことと、「食物繊維を豊富に摂る」ことが重要です。
いずれも食べすぎ、摂りすぎに注意が必要です。
少酒・・・「酒は百薬の長とは言えど、万の病は酒よりこそおこれ」
さまざまな生活習慣病がアルコールと密接に関わっていて、大酒をすれば多くの疾病が誘発される可能性が高まります。
「健康日本21」では、アルコールに関して1日20g(日本酒に換算して1合程度)の摂取が望ましいとされています。
ビールは、中瓶1本500mL、ウイスキー・ブランデーは、ダブル60mLが目安。
これは、どれかを単独でと言う意味で、合わせて飲んでもよいということではありません。念のため。
アルコールは少量であれば良薬ですが、飲み過ぎには注意が必要で、たくさん飲める人でも、1日にその程度の飲酒量が望ましいということです。
3多(さんた)「多動・多休・多接の勧め」
「多動」・・・「2本の足は2人の医者」
身体活動をできるだけ多くして、しっかり毎日の生活の中で維持しましょう。
身体を動かした後は、しっかりと休養をとることが重要です。
メリハリのある生活は、健康長寿には欠かせない要素です。
1日に20分の歩行を2回。体操・筋力トレーニングを各10分、 身体を活発に動かすことは、健康づくりに欠かせません。
よく歩くことが大切です。日常生活の活動量を増やして身体活動を高めましょう。
「多休」・・・快眠で疲労回復、ストレス解消、休養をしっかりとる
標準的には、6~8時間ですが、快適な睡眠時間は個人差があります。
あなたの活動量に応じた適正な睡眠時間をとるよう心がけましょう。
休養は「睡眠」に限らず、仕事の合間の「休憩」、月6日以上の仕事をしない、休日、夏休み・年末等の休暇等で、心身共にリフレッシュすることが大切です。
「多接」・・・多くの人、事、物に興味をもち、接することで創造的な生活をする。
年をとっても社会に貢献できる、そういう心持ちが若さを維持させてくれます。
そういう生活を送ることができるように工夫を凝らし、何かを常に創り出すような趣味を持つことが必要です。
例えば俳句や絵を描いたりと、必ずしも仕事とは関連がなくても、趣味豊かに創造的な生活を送ることが健康長寿に欠かせない条件です。
趣味や目的をもって生活している人は、何歳になっても生き生きとしています。
以下のように、もっと具体的な勧奨をされている専門家もいます。
健康の維持・増進のために、今日からできる4つのポイント
(食事、運動、睡眠・休養、規則正しい生活)
1.「食事」・・・バランスのとれた食事を心がける
バランスのとれた食事を心がけることで、健康の維持・増進が期待できます。
1日に何をどのくらい食べたらよいかは、厚労省と農水省が策定した「食事バランスガイド」がお勧めです。
より気軽にバランスのとれた食事を取り入れたいときは、「栄養3・3運動」の考え方を参考にしましょう。
「3・3」は「3食・3色」を意味し、「3食」は、朝・昼・夕の1日3回の食事をしっかりとること、「3色」は、毎食「3色食品群」の食品をそろえて食べることを指しています。
「3色食品群」とは、食品を赤色・黄色・緑色の3つに分類したものです。
それぞれの働きと食品例は次の通りです。
「血や肉をつくる」 赤色の食品: 肉、魚、卵、大豆、牛乳 等
「働く力になる」 黄色の食品: ご飯、パン、芋、砂糖、油 等
「体の調子を整える」 緑色の食品: 野菜や海藻、果物 等
例えば、パンのみの朝食だと「黄色の食品」だけなので、「赤色の食品」から目玉焼きを、「緑色の食品」から海藻サラダを食べることで、栄養素のバランスを整えることができます。
昼食に焼き魚(「赤色の食品」)を食べる場合は、「黄色の食品」としてご飯を、「緑色の食品」として野菜炒めを一緒に食べると3色そろいます。
夕食のメインをステーキ(「赤色の食品」)にするなら、「黄色の食品」としてパンを、「緑色の食品」として生野菜サラダを組み合わせれば、3色バランスよく食べることができます。
緑色の食品は摂取量が少なくなりがちなので、デザートに果物を食べてもよいでしょう。
このように、1つのメニューが決まったら、それが主に何色の食品なのか確認し、足りない色の食品を追加するとわかりやすいです。
手軽に栄養バランスを整えられる「3色」を次の食事から意識し、朝・昼・夕の3食をしっかり食べるようにしてください。
毎日の食は健康の土台。食べ過ぎは肥満のもとになり、塩分や脂肪の過剰摂取は、循環器疾患、脳血管疾患等のリスクを高めます。
一方、痩せ過ぎても、骨量減少や虚弱が心配。
栄養バランスのとれた適切な量の食事を一日三食食べ、適正体重の維持を心がけましょう。
定食屋では「副菜の小鉢」を1品、コンビニでは「ヨーグルト・卵・サラダ」を追加しましょう。
丼物や麺類、コンビニのパンなど単品で済ませてしまうと、お腹は一杯になっても、栄養バランスは偏りがち。
野菜や乳製品等一品プラスして、ビタミンやミネラル、食物繊維等の栄養素を補いましょう。
朝食を抜くと、高血圧、糖尿病、高コレステロールのリスクが高まりますので、朝食を食べる習慣をつけましょう。
2.「運動」・・・適度な運動を習慣にする
運動を習慣的に行うと、体の機能を高めて生活習慣病を予防できるといわれています。
運動すれば、エネルギーが消費されて内臓脂肪が減少し、血管や心臓が強化され、高血圧や糖尿病、肥満、結腸がん等のリスクも下がります。
理想は、歩くことと同程度の緩やかな運動を1日に30~60分、週3回以上行なうこと。
まずは、1日10分間、今より多く体を動かしてみましょう。
ただし、過度な運動は腰痛といった関節痛や循環器系の合併症を引き起こす危険性もあります。
せっかく健康のために運動するのですから、安全で効果的に行いたいものです。
そこで、安全で効果的な運動のための6つのコツを知っておきましょう。
運動における6つのコツ
1.トレーニングの内容・目的・意義をよく理解し、積極的・意識的に取り組む。
2.有酸素能力・筋力・柔軟性をバランスよく高めるようにする。
3.目的にあった機能(筋力・有酸素能力・柔軟性等)を優先的に高める。
健康づくりでは有酸素運動と、太もも等の大きな筋肉のトレーニング・ストレッチが有効。
4.トレーニングの実施内容は自分の能力に合わせて、無理のない範囲で行う。
5.体力・筋力の向上に合わせて、運動の強さ・量・内容を徐々に高めていく。
6.運動プログラムは、ある程度の期間、規則的に繰り返すようにする。
上記のことを意識しながら、運動を日常生活の1つとして習慣化していきましょう。
プラス1,000歩、歩いてみよう(約10分のウォーキング)
近場への移動は歩く、エレベーターではなく階段を使う、歩幅を大きく早足にすると更に効果がアップします。
「ながら運動」をしよう
オフィスでコピーを取りながら「かかとをゆっくりと上げ下げ」してみたり、歯磨きをしながら「上半身をやや前傾にし、かかとをお尻に当てるように、両足交互に膝を素早く曲げ」てみましょう。
続けることで筋肉の衰えを防ぎ、疲労回復につながります。
3.「睡眠」・・・正しい知識を身につけて良質な睡眠をとる
睡眠には、心身の疲労を回復する役割があります。
ただし、睡眠が効果を発揮するのは、睡眠の質がよく、適切な睡眠時間だった場合です。
反対に、睡眠の質が悪化したり、睡眠時間が不足したりすると、健康上の問題や生活への支障が生じてしまいます。
良い睡眠を知るためには、厚労省が策定した「健康づくりのための睡眠指針 2014」が参考になります。
「睡眠 12 箇条」を軸に、健康管理につながる睡眠に関する情報がまとまっています。
良質な睡眠のために、まずは睡眠についての正しい知識を身につけましょう。
睡眠12箇条
1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
11.いつもと違う睡眠には、要注意。
12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
忙しい人でも次の事なら、無理なく続けられます。
寝る前に、緩やかなストレッチ(プチエクササイズ)をしよう
寝る前に1分でも体をほぐすと、血流やリンパの流れが良くなり、疲労回復しやすくなります。
特に肩甲骨をストレッチすると、寝返りを打ちやすくなり血流がアップ。
ベッドに仰向けになり、厚手のタオルを丸めたものを背骨に沿うように置いて、ゆっくり深呼吸する方法。肩甲骨が緩み、胸が開いて快眠を促します。
まとまった休養がとれなくても、小まめなケアでストレスを溜め込まない工夫をすることが大切です。
手軽な方法は、目を温めること。
目の副交感神経が刺激され、全身がリラックスできます。
温めたタオルや市販のアイマスクを使うか、オフィスなら、両手をこすり合わせて摩擦で温めて、目に当てるだけでも良いです。
4.「生活習慣」・・・規則正しい生活を送る
健康長寿者の共通点として、バランスのとれた食事や適度な運動と休養・睡眠が挙げられますが、これらができれば、自然に規則正しい生活をおくることができ、趣味や仕事をもって意欲的に活動もできるようになります。
生活習慣病の疾患は、糖尿病、心臓病、高脂血症、高血圧、脳血管疾患、痛風、呼吸器疾患、胃・十二指腸潰瘍、肝機能障害、骨粗しょう症、がんなど多岐にわたり、広くは肥満や歯周病も含まれます。
生活習慣病は年齢や性別を問わず、誰もがかかり得る病気なのです。
改善の余地がある生活習慣の一例として以下のような原因が考えられますが、当てはまるものはあるでしょうか。
・自身の健康に対する、過剰な自信や無関心
・酒やタバコ等の嗜好品を制限したくない
・効果を実感できるまでに時間がかかるため、モチベーションを維持できない
・生活が忙しく、睡眠や運動の時間を確保できない
・仕事の付き合いで飲酒せざるを得ない
ずるずると生活習慣を変えられないうちに病が進行し、気づいたときには深刻な状態に、こんな事態を避けるには、生活習慣をいきなり大きく変えるのではなく、今すぐ始められる「小さな一歩」を踏み出してください。
臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)
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