産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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化学物質の法規制-12 危険・有害性情報-(2)

2014年06月


先月は、化学物質の危険有害性情報性の伝達不足で起こる災害を防止するために、譲渡提供する際には、容器等へのラベル表示が必要であることを説明しました。
しかし、ラベルに表示できる内容は、容器サイズによって制限を受けます。

そこで、より多くの情報を提供するためのものとして、文書 (安全性データシート・SDS) の交付があります。

また、リスクアセスメント等による事業者の自主的な化学物質管理を進めるためにも、安全データシート(SDS)は必要となります。
以下に、文書交付に関する安衛法令を示します。

(文書の交付等)
法・第57条の2 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で、政令で定めるもの又は第56条第1項の物(以下この条において「通知対象物」(※1)という)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚労省令で定める方法(※2)により通知対象物に関する次の事項を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。

ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。

一 名称

二 成分及びその含有量
成分の含有量については、令別表第3第1号1から7までに掲げる物及び 令別表第9第1号から第633号までに掲げる物ごとに重量%を通知しなければならない。この場合における重量%の通知は、10%未満の端数を切り捨てた数値と当該端数を切り上げた数値との範囲をもつて行うことができる(則・第34条の2の6)

三 物理的及び化学的性質

四 人体に及ぼす作用

五 貯蔵又は取扱い上の注意

六 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置

七 前各号に掲げるもののほか、厚労省令で定める事項
厚労省令で定める事項は、次のとおり(則・第34条の2の4)
一 通知を行う者の氏名(法人は、その名称)、住所及び電話番号
二 危険性又は有害性の要約
三 安定性及び反応性
四 適用される法令
五 その他参考となる事項

通知は、対象物を譲渡し、又は提供する時までに行わなければならない。
ただし、継続的に又は反復して譲渡、提供する場合において既に通知が行われているときは、この限りでない(則・第34条の2の5)

※1 通知対象物とは、
(1)令・第18条の2の物(令・別表第9に掲げる物→現在633物質)、
(2)法・第56条第1項の物(製造許可物質→令・別表第3第1号に掲げる物→特化則第1類物質→7物質)
上記の(1)と(2)を併せて、現在、640物質

(参考)
上記の640物質は、SDS交付「義務物質」ですが、「努力義務物質」として、則・第24条の15の物質(特定危険有害化学物質等)があります。
また、この他にも新規化学物質として届け出られた物質のうち、強い変異原性が認められた物質は、「強い変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」において、SDSを交付するように指導されています。詳細は、次回に説明します。

※2 文書の交付その他厚労省令で定める方法
厚労省令で定める方法は、磁気ディスクの交付、ファクシミリ装置を用いた送信その他の方法であって、その方法により通知することについて相手方が承諾したものとする(則・第34条の2の3 )

2 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、前項の規定により通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付その他厚労省令で定める方法(※2)により、変更後の同項各号の事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方に通知するよう努めなければならない。

3 前2項に定めるもののほか、前2項の通知に関し必要な事項は、厚労省令で定める。

(法令等の周知)法・第101条
1 (略)
2 事業者は、通知された事項を、当該物質を取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けること、その他の厚労省令で定める方法(※3)により、当該物を取り扱う労働者に周知させなければならない。

※3 厚労省令で定める方法は、次に掲げる方法(則・第98条の2第2項)
一 通知された事項に係る物を取り扱う各作業場の見やすい場所に常時
掲示し、又は備え付けること。
二 書面を、取り扱う労働者に交付すること。
三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、
取り扱う各作業場に、労働者が当該記録の内容を常時確認できる機
器を設置すること。

臼井繁幸産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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