産業保健コラム

田中 朋子 相談員

積極的メンタルヘルス ~ストレス耐性をつける~

2015年02月


「健康とは、身体的・精神的・社会的にも完全に良好な状態にあることであり、単に病気ではなく病弱でもないことにつきるものではない(WHOによる健康の定義)」
そして、多彩な要因を視野に入れた包括的な健康観からメンタルヘルスを考える。

(1)精神疾患をもたずその危険をまぬがれていることは、メンタルヘルスの重要な前提条件である。ただしそれだけで十分ではなく、(2)以下のさまざまな条件が満たされなければならない。

(2)メンタルヘルスは、いきいきと自分らしく生きるための重要な条件であり、生活の質(QOL)に大きな影響を与えるものである。

(3)メンタルヘルスは、以下の諸要素に分けて考えることができる。
a.状況に応じて適切に考え、現実的に問題を解決できること(知的健康)
b.自分の感情に気づいてこれを表現できるとともに、他人の感情について理解し共感できること(情緒的健康)
c. 他人や社会との間に建設的な良い関係を築けること(社会的健康)
d.人生の目的や意義を見出し、主体的に人生の選択を行えること(人間的健康)

(4)メンタルヘルスには、個人の精神的な資質や能力の他に、身体の状況、社会経済的な状況、住居や職場の環境、対人関係など、多くの要因が関与している。なかでも身体的健康とメンタルヘルスは相互に強く関係している。

(「今日のメンタルヘルス」p12~13より引用 (財)放送大学教育振興会)

危機的な状況は危険(ピンチ)であるとともに一つの機会(チャンス)でもある。単に失敗をする、という事実が落ち込みや悲しみを生じさせるのではなく、その人がその出来事をどのように受け止め、評価するかによって心的事実は様々に異なってくる。

a.のように状況に応じ適切に考えれば失敗を悔やんだり、嘆くよりも「今すべきこと」が見えてくる。b.では自分の怒りや嫉妬などの否定的感情を「こんなことを言ってはいけない」と押し込めるのではなく「私はあなたの~という態度に腹が立っている」と表現してみる。「あなたが私を怒らせた」のではなく、自分が怒りを感じていることを表現すると、c.の「他者と建設的な良い関係を築く」一歩になる可能性が出てくる。そうした体験はd.の「主体的に人生の選択を行う」ことに通じると考えられる。

その体験から学ぶことは多く、問題解決能力を身につけたことになる。失敗を失敗で終わらせるか、次に活かすかは紙一重である。「生き生きと自分らしく生きるために」a、b、c、dの視点で問題に向き合って欲しいものである。

また、ストレッサーを整理して、その種類・強度・解決困難度を書き出す。
頭の中で問題がグルグル回っていると不安が大きくなるばかりだが、書き出してみると現状が見えてくる。そこで「解決困難度の低いもの」の対処をする。一つ解決できると「こころの自由度」が増し、視野も広がってくる。一人で抱え込まず、適切に相談を持ちかけることも重要である。ストレスに向き合い耐性をつけていくことは積極的なメンタルへルス対策である。

メンタルヘルス対策促進員 田中 朋子

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