2015年05月
「ラインによるケア」とは、職場におけるメンタルヘルス対策の推進にあたって既におなじみの考え方であろうかと思います。この考え方は、厚生労働省指針「労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号)」(以下「指針」)において4つのケアのひとつとして掲げられています。メンタルヘルス不調の予防の基盤となる早期発見・早期対応には、このラインによるケアの徹底が欠かせません。
指針では、ラインを「日常的に労働者と接する、職場の管理監督者」と定義しています。更に、ラインによるケアを
・職場環境等の把握と改善 (指針6(2))
・労働者からの相談対応 (指針6(3))を行うための取組項目として記載するとともに、管理監督者を
・部下である労働者の状況を日常的に把握しており、
・個々の職場における具体的なストレス要因を把握し、
・その改善を図ることができる立場にある者として記載しています(指針5 (2))。
多忙な管理監督者にとって、指針の諸項目を実行していくことは、一見、困難を伴うものであるのかもしれません。
しかし、あくまでも原点に立ち返った日常的職場運営の一環でこれらの諸管理を徹底するという立場に立てば、より容易にラインによるケアを実践できるものと考えられます。その日常的職場運営の一環でのケアの代表例として、点呼の実施が挙げられます。点呼とは、いかにも単純な手法であると受け止められるかと思いますが、それによって得られる情報は多岐にわたりますので、非常に効率の良い管理手法であると言えます。
狭義の点呼は氏名を読み上げ返答を得ることですが、IT点呼の広がりでも見られるように、見て・聴いて・話すことによって、部下の体調を総合的に判断できる情報が容易に得られるという点で優れた手段として、点呼を位置づけることができます。日常的な職場運営を実践する管理監督者の立場では、日々の点呼という手段によって、部下自身の平均的な姿との違い、
例えば…
「昨日よりも問いかけへの反応が鈍い気がする」
「今日は表情が少しこわばっているようだ」
など、わずかな変化でも察知することができれば十分です。
より専門的な健康管理面での判断は産業保健スタッフに委ねるとして、管理監督者が点呼を活用した見守りを行うことによって、精度の高い早期発見・早期対応が、より容易に実現されるものと期待できます。
産業保健相談員 昇 淳一郎
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