産業保健コラム

廣瀬 一郎 相談員

    • カウンセリング
    • カウンセリングルームこころの栞 主宰カウンセラー
      ■専門内容:カウンセリング全般
  • ←記事一覧へ

自己肯定と自己受容から始める

2010年10月


「あの人のせいで私はこんなになった。全てあの人のせいだ」
「私は正しいので、変わる必要なんてない。変わらないといけないのは周りの人だ」このようなことを、耳にすることがしばしばあります。このような他者否定、他罰的思考は、自律性の対極にあり、建設的な問題解決のためには、大きな阻害要因となります。

では、この他者否定はどうして起こるのでしょうか?
一つの考え方として、この人は、自己受容ができていない、自分を信じることができない、自信のない人とも言えるのではないでしょうか。自分が信じられない人は、周囲の人や出来事に振り回されます。問題を客観的に観ることができなかったり、他者依存であったりと、自己責任がとれない傾向にあると思われます。たとえば、「私は人に特に年下の人にやさしくすべきである」という“自己”と「私は、時々年下の人をいじめてしまう」という“自我”があるとします。“自己”はやさしいのに、“自我”はそのやさしさを変えてしまうわけです。自分に自信のない人は、“私は冷たい人だ”ということを受け入れることができず、忘れ去ったり、無意識下に沈めたりするという防衛を働かせ、自己が変化することを阻止します。これは、こうありたい、こうだと思っている“自己(Self)”とそうさせない“自我(ego)”の不一致により起こるものです。この不一致な状態は、ありのままの自己を受け入れることができていない、つまり、自分を信じることができない(自信がない)状態といえます。

では、自信を持つということはどういうことでしょうか?
それは他者とのコミュニケーション(他画像)を通して描くことができた自画像によって、自己理解ができ、自分の良いとことも悪いところもありのまま受け入れる、言わば自己受容ができることです。それは、ありたい“自己”と現実の“自我”が一致している状態でもあります。そして自信が持てると、自分を尊重してもよいとの“自己肯定感”が生まれ、そこから、“他者受容”や“他者肯定感”につながります。自己受容ができ、余裕ができると、周囲の人に対しても、寛容になることができます。そうすると、自主性や自発性が生まれ、自分でやってみよう、やれるはずだという勇気が湧いてくるのです。また感情的になっても、その自分を受け入れられるようになり、自己コントロールができやすくなります。加えて、現実的な対処までできるようになるのです。上記の例でいえば、「私は人に特に年下の人にやさしくすべきである。」と思っている。でも、「私は、時々年下の人をいじめてしまう」「人にやさしくできないような私は、私であってはならない」かもしれない。でも、「冷たい人である」というのも偽りのない私である。「良いところも、悪いところも全て認め、ありのままの自分で自分らしく生きていいのだ」と思えるようになると、自発性が芽生えます。
つまり、

①他者とのコミュニケーションを通して自画像を描く
②自己理解をする
③自己受容ができる
④自己肯定感が持てる
⑤他者受容ができる
⑥他者肯定感が生まれる
⑦他者に寛容になれる
⑧主体性・自発性が備わる
⑨自分を適切にコントロールできる
⑩自分の問題として自己責任がとれる
⑪適切な代替案が見つかる
⑫実行する。ということになります。

建設的・現実的な問題解決のためには、他者否定、他罰的思考は大きな障害となります。この障害を克服するためにまず、自己受容から始めてみませんか?少しずつ変化していく自分が実感できると思います。そして、自分が目指す自己実現というゴールへ辿りつくことができるのです。

記事一覧ページへ戻る