産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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防じんマスク

2013年03月


 防じんマスクは、空気中に浮遊する粉じん等の吸入により生じる人体への 影響を防止するために使用されるものです。
 その規格については、防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)で 定められています。
 適正な選択、使用等については、「防じんマスクの選択、使用等について」 (基発第0207006号 平成17年2月7日) に示されています。
 その内容は、今まで説明してきた防毒マスクとほぼ同じですが、防じんマスクの選定に当たっては、粉じん等の種類及び作業内容に応じ、次の性能区分を有するものでなければなりません。

 まず、オイルミスト等が混在しない環境下では①を、オイルミスト等が混在する環境下では②を選定します。

 なお、防じんマスクの性能区分を表わす記号の意味は、

方式         R (Replace)取替え式   D (Disposable)使い捨て式
試験粒子     S ( Solid ) 固体   L ( Liquid ) 液体
粒子捕集効率 1 80.0%以上  2 95.0%以上  3 99.9%以上

 1.廃棄物の焼却施設に係る作業で、ダイオキシン類の粉じんのばく露のおそれのある作業
(安衛則第592条の5)
① RS3、RL3
② RL3

2.放射性物質がこぼれたとき等による汚染のおそれがある区域内の作業又は緊急作業
(電離則第38条)
① RS3、RL3
② RL3

3.金属のヒューム(溶接ヒュームを含む)を発散する場所における作業
(鉛則第58条、特化則第43条、粉じん則第27条)
① RS2、RS3、DS2、DS3 RL2、RL3、DL2、DL3
② RL2、RL3、DL2、DL3

4.管理濃度が0.1mg/m3以下の物質の粉じんを発散する場所における作業
(鉛則第58条、特化則第43条)
① RS2、RS3、DS2、DS3 RL2、RL3、DL2、DL3
② RL2、RL3、DL2、DL3

5.上記以外の粉じん作業
① RS1、RS2、RS3 DS1、DS2、DS3 RL1、RL2、RL3 DL1、DL2、DL3
② RL1、RL2、RL3  DL1、DL2、DL3

最近では、有害物質の濃度等に応じて防じんマスクの性能が要求されています。
その例を以下に示します。

例1 石綿が使用されている建築物、工作物、船舶の解体作業では、建材の種類と工法(発じんの程度)に応じて、使用できる呼吸用保護具を次のように4つに区分しています。
区分1は、吹付け石綿の掻き落し作業等で、発じんが大きいために、防じんマスクは使用できません。
区分2は、全面形取替式防じんマスク以上(粒子捕集効率99.9%以上)
区分3は、半面形取替式防じんマスク以上(粒子捕集効率99.9%以上)
区分4は、取替式防じんマスク以上(粒子捕集効率95.0%以上)

例2 インジウム化合物を取り扱う屋内作業場は作業環境測定結果に応じて厚労省大臣が定める規格を満たすものが必要になります(H26年1月1日施行)
3μg/m3 未満  半面形取替式防じんマスク(粒子捕集効率99.9%以上)
15μg/m3未満  全面形取替式防じんマスク(粒子捕集効率99.9%以上)
15μg/m3以上の環境下では、防じんマスクは使えません。

【参考】
呼吸用保護具の選定の基本は、できるだけ「防護係数」の高いものを選ぶことです(24年11月号参照)
防護係数は、有害物質から防護できる程度を示す係数で、次の式で表します。
防護係数 = 面体等の外側の有害物質濃度/面体等の内側の有害物質濃度
この式を変形しますと、

ばく露限界濃度×防護係数 = 面体等の外側の有害物質濃度

となり、この呼吸用保護具は、どの程度の作業環境濃度まで使用できるかがわかります。
因みに、
半面形取替式防じんマスクの指定防護係数は、3~10
全面形取替式防じんマスクの指定防護係数は、4~50 です。

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