産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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化学防護衣類

2013年04月


 化学物質が皮膚に付着して起こる障害は、次の2つです。

 (1)付着(接触) することによって起こる皮膚障害
 (2)付着した皮膚から吸収されて起こる中毒

 皮膚は、異物の侵入を防ぐバリヤですが、表面には、毛のう、汗腺、皮脂腺が開口しており、化学物質の侵入を防ぐ上では完全なものではありません。
 表皮細胞を通過した化学物質は、血流やリンパ系に移行して全身に循環し、中毒を起こします。
 これら皮膚付着による障害を防ぐ目的で使用されるのが化学防護衣類であり、次のような留意が必要です。

1.選定

(1)化学物質(液体・気体)を透過しない材質のものを選びます。
 具体的には、不浸透性材質で作った化学防護服・手袋・靴・保護眼鏡等があり、これらは日本工業規格(JIS)によって構造と性能が規定されていますので、規格に適合するものを選ぶことが必要です。

化学防護服 JIS T8115
化学防護手袋 JIS T8116
化学防護長靴 JIS T8117
保護眼鏡 JIS T8147

(2)取扱う化学物質等の性状や作業内容等に応じて、適切なものを選びます。
 化学物質の性状等は、安全データシート(SDS)等を参考にします。
 短時間作業(点検、修理、容器の開閉等)であっても、化学物質の思わぬ飛散等に備えて、保護眼鏡や化学防護手袋の着用が必要です。作業内容・場所の状況等によっては、さらに化学防護長靴、化学防護服も必要になります。

2.管理

 適切な保護具を選定しても破損していたり、ピンホールがあったり、化学物質が付着したままであったりすると、保護具としての効果はありませんので、常に保護具としての性能が維持できるように日常の保守管理、使用前後の点検が大切です。

3.使用等

 化学物質による職業性疾病の多くは、眼や皮膚への付着によるものです。
 これを防ぐには、適切な保護具の使用等を徹底することが重要です。適切な使用等を徹底するためには、作業規定(手順等)に化学防護衣類の使用を明記し、教育を実施し、使用状況を確認し、使用が徹底するまで注意することが必要です。
 化学防護服を使用しての作業は、体温の放熱がしにくく(液やガスが不浸透性の材質を使用のため)、夏季高温多湿の環境下では、内部が蒸れるので、熱中症に対する注意が必要となります。

4.法令等による規制

安衛則593条
 事業者は、著しく暑熱又は寒冷な場所における業務、多量の高熱物体、低温物体又は有害物を取り扱う業務、有害な光線にさらされる業務、ガス、蒸気又は粉じんを発散する有害な場所における業務、病原体による汚染のおそれの著しい業務その他有害な業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適切な保護具を備えなければならない。

安衛則594条
 事業者は、皮膚に障害を与える物を取り扱う業務又は有害物が皮膚から吸収され、若しくは侵入して、中毒若しくは感染をおこすおそれのある業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、塗布剤、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履物等適切な保護具を備えなければならない。

特化則44条
 事業者は、特定化学物質で皮膚に障害を与え、若しくは皮膚から吸収されることにより障害をおこすおそれのあるものを取り扱う作業又はこれらの周辺で行われる作業に従事する労働者に使用させるため、不浸透性の保護衣、保護手袋及び保護長靴並びに塗布剤を備え付けなければならない。

 なお、詳細は次の通達(基発第0811001号 平成15年)を参考にしてください。
 「化学物質等による眼・皮膚障害防止対策の徹底について」

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