産業保健コラム

廣瀬 一郎 相談員

    • カウンセリング
    • カウンセリングルームこころの栞 主宰カウンセラー
      ■専門内容:カウンセリング全般
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ノンバーバルコミュニケーション

2012年06月


私達が日常の場面で相手と良いコミュニケーションをとろうとしても、会った瞬間の“非言語”が対人関係に大きく影響し、その後の関係の是非を決めることがあります。“非言語”コミュニケーションとは、言葉として表現される言語以外のものを指します。例えば、外観(体型、服装、化粧、髪型、持ち物)、身体的行動(目の表情、皮膚の色艶、立つ・座る姿勢、構え、身振り手振り)、空間的行動(相手との距離の取り方、座り方)、時間的行動(肝心の話に入るまでの時間、問いかけに対する反応時間)などを言います。この非言語メッセージの中に『消極的な攻撃』といえる行動があります。例をあげると、“呼ばれても返事をしない”行動には、聞こえないではなく否定・非難・軽蔑・避ける・反抗等の意思が汲み取れます。言葉は発しておらず受動的ですが、非言語行動でしっかりと相手に自分の本音を伝えています。“遅刻をする”という行動には、私なら許してもらえる、私に注目して欲しい、自分の存在感を示したい、相手にされたいという無意識な意図が、“電話やメールの返信をしない”という行動には、無視、無言の抵抗や反発、関わりを持ちたくない、恐れなどが、“何度もトイレに行く”という行動には、落ち着かない、居たたまれない、この空間に居たくない、“いつも笑顔を絶やさない”には、良い人でいたい、人に嫌われたくない、自分の本心を出してはいけない、笑顔という仮面で相手からの攻撃を避けるというそれぞれの意味が、“何度も時計を見る”という行動には、早く仕事を終えたい、強迫性、例えば話が長いという不満を伝えるという意図が、“敢えて残業をする”には、こんなに頑張っているんだから大目に見てほしい、はかどっていない、うつ状態を伝えています。

何時もではありませんが、このような日頃余り注目されていない非言語行動は、実は気づかぬうちに他者に、真意が伝わっているということがあります。<どうしてあの上司とうまくいかないんだろう>、<なんで私だけきつく言われるんだろう>、<同僚と仲良くできない>ということはありませんか。自分自身があたり前にとっている行動が、見えないメッセージとして相手に伝わり、知らない間に職場で疎外され、一人浮いてしまうことになりかねないのです。また「はい、わかりました」「ありがとうございました」「お疲れ様」と伝えていても、ひょっとしたら、言葉と一致しないあなたの何気ない非言語が相手を不快にさせ、いつの間にか両者の関係を悪くしているかもしれません。

相互理解のためのコミュニケーションが、非言語を軽く見積もってしまったばかりに相互誤解の結果を生んでしまうのです。自分と他者の非言語コミュニケーションの癖を知り、歪みのない一致したコミュニケーション関係を築いていきたいものですね。

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