産業保健コラム

門田 聖子 相談員

    • カウンセリング
    • シニア産業カウンセラー
      ■専門内容:カウンセリング全般・治療と仕事の両立支援
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“ラポール”は職場内の良好な交流のスタート

2019年10月


 皆さんの職場では良好な交流が行われているでしょうか、時間の制限がある中、少ない人数で仕事をするわけですから、良好にしたいと思いつつも、なかなか難しいのではないかと思います。その難しさの一つに「無礼さ」が影響をしているのではないかと思うのです。この「無作法」は、横柄さや失礼にあたることで、人をあざける、軽んじる、相手を傷つけるようなからかい方をする、不快な冗談を言う、会議中に携帯をさわるなどが該当します。
 皆さんは、あなたが話しかけた相手が、その最中に携帯をさわることを無礼だと感じますか?これも快とまではいわなくとも、何とも思わない人もいると思われます。私の正義正しさと、相手にとっての礼儀正しさにはかなりの隔たりがあるかもしれません。例として、明日、勤務を共にするので、先輩に「よろしくお願いいたします」と挨拶にいくと、あきらかに嫌な顔をして返事もしてもらえない。そして翌日、その先輩と一緒に仕事をするが、完璧に委縮して、業務上声をかけないといけないこともわかっているが、どうしても声がかけられない。そして、そのことでまた厳しい言葉をかけられる。

 このような状態がずっと続くと、必要である報告・連絡・相談がなされないので、仕事の質は下がる。そしてミスやエラーや事故にも繋がり、損失をうむ。あるいは、「そんなことは幼稚園児でもできる」というような言葉をかけられ、出勤できなくなるということもあるでしょう。働く私たちにとって、業務上の間違いを指摘されることは、当然のことですが、軽んじられた態度をとられてしまった人にとっては、とても無礼なことになるのです。この無礼さによる損失、喪失は大きいものと思われます。
 では、職場で、この無作法を減らしていくためにはどのようにするとよいのでしょうか。カウンセラーとして、心がけている、相手に敬意を払い、純粋であることの延長として、“ラポール(rapport)”が1つの鍵になるのではないでしょうか。
 ラポール(rapport)は、相性というように思ってもらうとよいものですが、辞書では、「情緒的疎通性」と訳されています。もとは一致、交流、交際、関係などを意味する仏語で、2人以上の人の間にできあがる、親和的で、相互に信頼感のある関係や雰囲気をいいます。特に精神療法やカウンセリング等を円滑に進める上で、両者の間に必須の前提条件とされます。このラポールを職場の人間関係にもとりいれてみることが大切ではないかと思います。
 ラポールを形成するために、丁寧な挨拶をする、相手を尊重した態度、言葉づかい(必要であれば敬語を使う)、暖かい声音での対話を心がける、相手との適切な距離を保つ、些細なことに気をつかう、成果を共有する、謙虚な態度で質問をする、お互いの存在を認め合い笑いかけたりする。そして、相手個人を思いやりながら、率直に批判をすることも大切です。敬意を持って礼儀正しく接すればよいということになります。人や組織が無礼な態度により被る損失はかなり大きいと言いましたが、もう1つ、無礼なことをしていることを目撃した人にも大きな影響を与えます。自分ではない人が叱責されているのを見て、仕事にいけなくなる、ということがそれにあたります。そして、パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、マタニティハラスメントも相手を尊重しない無礼な行動で、ラポールや信頼関係を無視した失礼な態度と言えます。

 自分自身と職場の中に、「礼儀正しさ」を持ちこみ、暖かいラポールを築くために、
先ず相手と自分に“敬意”払いましょう。

「人間のこころはテクノロジーより優先されなければいけない」
アルバート・アインシュタイン

門田 聖子 産業保健相談員

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