産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
  • ←記事一覧へ

化学物質の法規制-19 危険・有害性情報-(9)

2015年01月


 化学物質の危険有害性情報は、災害の防止対策、事故時の対策等において最も基本的で重要なものです。
 危険有害性情報を分かりやすく伝えものとして、絵表示があります。

 絵表示とは、情報を伝達することを意図した、シンボルと境界線、背景のパターン又は色等の図的要素から構成されるもので、1つの頂点で正立させた正方形の中に、白い背景の上に黒いシンボルを置き、はっきり見えるように赤い枠で囲んだものです。
 シンボル(symbol)とは、情報を簡潔に伝達することを意図する画像要素(炎,ガスボンベ、どくろ、腐食性、健康有害性等)のことです。

 GHSでは、9種類の絵表示(Pictograms)が決められており、各危険有害性クラスおよび区分に応じ表示することとなっています。
 どのような絵表示をするかは、JIS Z 7253(GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法)の附属書 A に書かれています。

 絵表示は、これらから著しく異なってはならないことになっています。
 絵表示の意味と災害予防策は、次の通りです。(本コラムでは、絵は表示できませんので、シンボルマークを言葉で示します)

<炎>
 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む)、可燃性/引火性エアゾール、引火性液体、可燃性固体、自己反応性化学品、自然発火性液体、自然発火性固体、自己発熱性化学品、水反応 可燃性化学品、有機過酸化物を表しており、空気、熱や火花にさらされると発火するようなものを表しています。

【例】引火性液体(区分1~3)
(災害予防)
 熱、火花、裸火、高温のような着火源から遠ざけること。禁煙。
 空気に接触させないこと。(自然発火性物質)
 保護手袋、保護衣および保護眼鏡/保護面を着用すること。

<円上の炎>
 支燃性/酸化性ガス、酸化性液体、酸化性固体を表しており、他の物質の燃焼を助長するようなものを表しています。
(災害予防)
 熱から遠ざけること。
 衣類および他の可燃物から遠ざけること。
 保護手袋、保護衣および保護眼鏡/保護面を着用すること。

<爆弾の爆発>
 火薬類・自己反応性化学品・有機過酸化物を表しており、熱や火花にさらされると爆発するようなものを表しています。
(災害予防)
 熱、火花、裸火、高温のような着火源から遠ざけること。禁煙。
 保護手袋、保護衣および保護眼鏡/保護面を着用すること。

<腐食性>
 接触した金属または皮膚等を損傷させる場合があります。

【例】金属腐食性物質、皮膚腐食性・刺激性(区分1A~C)、
 眼に対する重篤な損傷・眼刺激性(区分1)

(災害予防)
 他の容器に移し替えないこと。(金属腐食性物質)
 粉じんまたはミストを吸入しないこと。
 取扱い後はよく手を洗うこと。
 保護手袋、保護衣および保護眼鏡/保護面を着用すること。

<ガスボンベ>
 高圧ガスを表しており、ガスが圧縮または液化されて充填されているものを表しています。
 熱したりすると膨張して爆発する可能性があります。
(災害予防)
 換気の良い場所で保管すること。
 耐熱手袋、保護衣および保護面/保護眼鏡を着用すること。

<どくろ>
 急性毒性を表しており、飲んだり、触ったり、吸ったりすると急性的な健康障害が生じ、死に至る場合があります。

【例】急性毒性(区分1~3)

(災害予防)
 この製品を使用する時に、飲食または喫煙をしないこと。
 取扱い後はよく手を洗うこと。
 眼、皮膚、または衣類に付けないこと。
 保護手袋、保護衣および保護眼鏡/保護面を着用すること。

<感嘆符>
 急性毒性、皮膚刺激性、眼刺激性、皮膚感作性、気道刺激性、麻酔作用の健康有害性があるものを表しています。

【例】急性毒性(区分4)  皮膚刺激性(区分2)  眼刺激性(区分2A)
 皮膚感作性(区分1A、1B)  特定標的臓器毒性(区分3)

(災害予防)
 どのような危険有害性があるか確認して、ラベルに記載された注意書きに沿った取扱いが必要です。

<環境>
 水生環境有害性を表しており、環境に放出すると水生環境(水生生物およびその生態系)に悪影響を及ぼす場合があります。

【例】水生環境有害性(急性区分 1,長期間区分 1、2)

(災害予防)
 環境への放出を避けること。

<健康有害性>
 呼吸器感作性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性、特定標的臓器/全身毒性(単回または反復暴露)、吸引性呼吸器有害性を表しており、短期又は長期に飲んだり、触れたり、吸ったりしたときに健康障害を引き起こす場合があります。

【例】呼吸器感作性(区分1A、1B)   生殖細胞変異原性(区分1A~2)
 発がん性(区分1A~2)      生殖毒性(区分1,2)
 特定標的臓器毒性(区分1,2) 吸引性呼吸器有害性(区分1,2)

(災害予防)
 この製品を使用する時に、飲食や喫煙をしないこと。
 取扱い後はよく手を洗うこと。
 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレー等を吸入しないこと。
 推奨された個人用保護具を着用すること。

 職場で取り扱っている化学物質には、どのような絵表示がなされていますか。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

記事一覧ページへ戻る