産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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化学物質の法規制-25 年少者の就業禁止、成人の時間外労働の制限

2015年07月


前回は、母性保護のため女性の就労禁止について説明しましたが、女性以外でも化学物質に関して就労が制限されているものとして、年少者の就業禁止、18歳以上の者の時間外労働の制限があります。

1. 年少者の就業禁止
(1) 労働基準法・第62条第2項、3項

使用者は、満18才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原材料、
~略~ 、著しく粉末を飛散し、有害ガス、有害放射線を発散する場所、
~略~ その他安全、衛生、福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
就かせてはならない業務の範囲は、厚労省令で定める。

(年少者就かせてはならない業務の範囲)
(2) 年少者労働基準規則・第8条

労基法・第62条第2項の規定により満18歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。

32 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、シアン化水素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

33 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、シアン化水素、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務

注1 32号は「取り扱う業務」、33号は「発散する場所における業務」となっています。

注2 アルバイトの学生も18歳未満であれば適用されます。

注3 違反した場合は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金(労基法119条)

2. 18歳以上の者でも、健康上特に有害な業務は1日2時間までの残業制限があります。

労働基準法・第36条第1項
36協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
ただし、厚労省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。

(労働時間延長制限のある健康上特に有害な業務)
労働基準法施行規則・第18条
労働時間の延長が2時間を超えてはならない業務は、次のものとする。

9 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

注1 違反した場合は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金(労基法119条)

【トピックス】化学物質・ラベル表示関係の法令改正

1.ラベル表示対象物質をSDS対象物質まで拡大
安衛施行令・第18条のラベル表示対象物質を、別表第9の名称等を通知すべき危険物及び有害物に掲げる物(SDS対象物質)に改めた。
公布 H27・06・10  施行 H28・06・01

2.第57条第1項に基づきラベル表示すべき項目から、「成分」の項目が削除され、成分表示は任意とされた。
公布 H26・06・25  施行 H28・06・01

H28・06・01からは、ラベルに成分を記載しなくてもよいことになります。
これは、表示対象物質が640に増加したことで、混合物については、ラベルに表示すべき成分の種類が大幅に増加し、情報が伝わりにくくなることが懸念されるので、ラベルへの成分の表示については、安全データシート(SDS)にも全ての成分が記載されていることを踏まえて、労働者に情報が伝わりやすくなるよう見直したものです。

注1 第57 条第1項の規定による表示をせず、又は虚偽の表示をした者は、6月以下の懲役又は50 万円以下の罰金となっています。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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