産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
  • ←記事一覧へ

改正・リスクアセスメント指針-2

2015年12月


5 実施時期
(1)法律上の実施義務(安衛則第34条の2の7第1項)

1).対象物を原材料等として新規に採用したり、変更したりするとき。

2).対象物を製造し、又は取り扱う業務の作業の方法や作業手順を新規に 採用したり変更したりするとき。
(化学物質等に係る建設物を設置、移転、変更、解体するとき、化学 設備等に係る設備を新規に採用し、若しくは変更するとき)
・上記に掲げる作業開始前に、リスク低減措置を実施することが必要。
・上記に係る設備改修等の計画策定時にもリスクアセスメント等を実施することが望ましい。

3).化学物質物による危険性・有害性等に変化が生じたり、生じるおそれがあったりするとき。
(化学物質等による危険性・有害性の新たな知見が確認されたときで、例えば、GHSやJISZ7252 での危険性・有害性の区分が変更された場合、日本産業衛生学会の許容濃度やACGIHのTLV-TWA 等で、ばく露限界が新規に設定され、又は変更された場合等であり、新たな危険性・有害性の情報が、SDS等により提供された場合)

(2)指針による努力義務
前記以外にも次の時期にリスクアセスメントを行うよう努めること。

1).化学物質等による労働災害が発生した場合であって、過去のリスクアセスメント等の内容に問題がある場合。

2).過去のリスクアセスメント実施以降、機械設備等の経年劣化、労働者の知識経験、新たな知見の集積等があった場合等、リスクの状況に変化があったとき。
(過去に実施したリスクアセスメント等で想定した範囲を超えるリスク変化が生じた場合)

3).過去にリスクアセスメントを実施したことがない、又は実施結果が確認できない場合。

6 リスクアセスメント等の対象の選定(実施対象選定基準)

(1)事業場における化学物質等による危険性又は有害性等をリスクアセスメント等の対象とする。

(2)リスクアセスメント等は、対象の化学物質等を製造し、又は取り扱う業務ごとに行うこと。
ただし、事業場の実情に応じ適切な単位で行うことも可能である。

(3)元方事業者は、混在作業によって生ずる労働災害を防止するため、混在作業についても、リスクアセスメント等の対象とすること。
(例えば、引火性のある塗料を用いた塗装作業と設備改修に係る溶接作業との混在作業がある場合に、溶接による火花等が引火性のある塗料に引火することによる労働災害等)

7 実施に当たり、事前に入手すべき情報
(1)実施に当たり、次に掲げる情報に関する資料等を入手する。
入手する情報には、定常的な作業のみならず、非定常作業も含まれる。
非定常作業には、機械設備等の保守点検作業や補修作業に加え、工程の切替えや緊急事態への対応に関する作業も含まれる。
混在作業等複数の事業者が同一の場所で作業を行う場合には、その状況に関する資料等も含める。

1)対象となる化学物質等に係る危険性・有害性に関する情報(SDS 等)

2)対象となる作業を実施する状況に関する情報(作業標準、作業手順書等、機械設備等に関する情報を含む)

(2)事業者は上記の他、次の情報に関する資料等を、必要に応じ入手する。

1)化学物質等に係る機械設備等のレイアウト等、作業の周辺の環境(機械設備等から外部へ拡散する化学物質等)に関する情報、発注者において行われたこれらに係る調査等の結果。

2)作業環境測定結果、特殊健康診断結果、生物学的モニタリング結果等

3)災害事例、災害統計、発生傾向分析、ヒヤリハット、トラブルの記録、労働者が日常不安を感じている作業等の情報、同業他社、業界の災害事例等を収集することが望ましい。

4)化学物質等による危険性・有害性に係る文献、作業上必要な資格・教育の要件、危険予知活動の実施結果、職場巡視の実施結果。

▽「衛生委員会の今月のメニュー」バックナンバーはこちら
https://ehimes.johas.go.jp/column/usui.html

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

記事一覧ページへ戻る