産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-5

2016年03月


今回から、リスクアセスメント指針に示されたリスクの見積り手法について、少し詳細に紹介します。

I.化学物質等が従事者に危険・健康障害を生ずるおそれの程度(発生可能性)と危険
・健康障害の程度(重篤度)とを考慮して見積る方法で、具体的には、以下のような方法があります。

1.マトリクス法

(1).発生の可能性と重篤度を相対的に尺度化します。

(2).次に、尺度化した発生可能性と重篤度を縦軸と横軸とした表(行列=マトリクス)を作成します。
この表に、発生可能性と重篤度に応じたリスクを割り付けます。

(3).見積りに当っては、発生可能性に該当する行を選び、次に見積り対象となる危険・健康障害の重篤度に該当する列を選ぶことにより、リスクを見積ることができます。

発生の可能性と重篤度の尺度化の区分【例】→指針内容を改変

(1).危険・健康障害の程度(重篤度)の尺度化
基本的に休業日数等(被災の程度)を尺度として使用します。

1 死亡
→死亡災害

2 重大
→身体の一部に永久損傷(失明、指切断等)を伴うもの
休業災害(1ヶ月以上)、一度に3人以上の被災者を伴うもの

3 休業
→休業災害(1ヶ月未満)、一度に2人の被災者を伴うもの

4 軽傷
→不休災害、かすり傷程度のもの

(2).危険・健康障害を生ずるおそれの程度(発生可能性)の尺度化
危険・有害性への接近の頻度や時間、回避の可能性等を考慮して尺度化します。

1. (可能性が)極めて高い
→日常的に長時間行われる作業に伴うもの(毎日頻繁に危険・有害性に接近するもの)で、かなりの注意力でも被災の回避困難なもの

2. (可能性が)比較的高い
→日常的に行われる作業に伴うもので回避可能なもの

3. (可能性が)ある
→非定常的な作業(故障、修理、調整等)で、危険・有害性に時々接近するもので、回避可能なもの

4. (可能性が)ほとんどない
→まれにしか行われない作業(危険・有害性の付近に立ち入ったり、接近することが滅多にないもの)に伴うもので回避可能なもの

(3).尺度化した発生可能性(縦軸)と重篤度(横軸)をマトリクスとしたもの。

                危険・健康障害の程度(重篤度)
死亡   重大  休業  軽傷
発生可能性  極めて高い  5    5    4    3
比較的高い  5    4    3    2
可能性あり  4    3    2    1
ほとんどない 4    3    1    1

2.数値化法

発生可能性及び重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを数値演算
(加算又は乗算等)してリスクを見積もる方法です。

(1)危険・健康障害の程度(重篤度)
死亡→30点 重大→20点 休業→7点 軽傷→2点

(2)危険・健康障害を生ずるおそれの程度(発生可能性)
極めて高い →20点 比較的高い→15点 可能性あり→7点
ほとんどない→2点

(3)加算の場合のリスク=重篤度の点数+発生可能性の点数

・・・次回に続く

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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