産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-6

2016年04月


今月は、3.リスクグラフ法によるリスクの見積りを説明します。
まず、リスクファクターの優先順位を決め、第一優先のファクターをランクに分岐させ、次に第二優先ファクターを分岐させ、更に次のファクターを分岐させるというように段階的にリスクファクタ―を分岐していくことにより、リスクを見積もる方法です。

例えば、危険又は健康障害の発生可能性とその重篤度について、危険性への遭遇の頻度、回避可能性等をステップごとに分岐していくことにより、リスクを見積もります。
リスクファクターそれぞれについて、二者択一(一項目のみ三択)で評価を行う手法で、区分が単純なため初心者でも評価しやすいという特徴があります。

一例を紹介します。
予め下記の「判定基準」と「リスク見積り表」を作成しておきます。
その後、次のステップで進めます。
1. 危害の程度を軽傷あるいは重傷なものかを見積ります。
2. 危険事象への暴露頻度が、まれか頻繁かを見積ります。
3. 危害を回避できるか否かを見積ります。
4. 危険事象の発生確率が、低いか、中程度か、高いかを見積ります(リスク見積り表)。
5. リスク見積り表に割り当てられた数字(リスクレベル)が大きいほど、対策の優先度が高いものになります。
6. リスクレベルに応じた措置を講じます。

「リスク見積りにおける判定基準」(例)

危害の程度  軽傷  軽微な危害 (不休災害、回復可能で障害が残らな
い危害)
(例)すり傷、裂傷、挫傷で応急処置を要する軽い傷

重傷  深刻な危害(回復可能だが休業を要する災害、回復
不可能な障害、致命傷)
(例)骨折、重度火傷、上下肢粉砕・挫滅、筋骨格障
害、命傷

曝露頻度   まれ  1作業シフトあたり1回以下の危険源曝露
1作業シフトあたり15分以下の危険源暴露
頻繁  上記を超える場合

回避可能性 回避可能 暴露者が危険源の存在に気づいており、危険状態又
は危険事象(事故)が迫っていることを認識できる特
定の条件(温度、騒音、人間工学など)により回避
できる
回避不可 回避が不可能

危険事象の発生確率

低い   当該業務の分野で証明され、承認されている成熟し
た技術
中程度  リスクに気付き、また作業場で6ヶ月以上の経験を
持つ十分に訓練を受けた人による不適切な挙動(人
に依存する場合)
過去10年以上発生していない類似の事故(類似事故
の有無の場合)
高い   作業場で6ヶ月以下の経験を持つ十分に訓練を受け
ていない人による不適切な挙動(人に依存する場合

過去10年間に工場で見られた類似の事故(類似事故
の有無の場合)

「リスク見積り表」(例)

                   危険事象の発生確率

危害の程度  暴露頻度  回避可能性  低い  中程度  高い
軽傷    まれ    可能     1    1    2
不可能    1    1    2
頻繁    可能     1    1    2
不可能    1    1    2
重症    まれ    可能     2    2    3
不可能    2    3    4
頻繁    可能     3     4    5
不可能    4    5    6

この手法は、上記のとおり危害の程度、暴露頻度、回避可能性のそれぞれについて、二者択一で見積りを行うものであり、区分が単純なため初心者に適した手法です。

・・・次回に続く

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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