産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-7

2016年05月


今回は、ILOの化学物質リスク簡易評価法(コントロール・バンディング)を用いてリスクを見積る方法を紹介します。
コントロール・バンディングは、ILOが開発途上国の中小企業を対象に有害性のある化学物質から労働者の健康を保護するために、簡単で実用的なリスクアセスメント手法を取り入れて開発した化学物質の管理手法です。
厚労省ホームページの「職場のあんぜんサイト」で、ILOが公表しているコントロール・バンディングのツールを修正追加したものを「リスクアセスメント実施支援システム」として提供していますので、これに沿って説明します。

この方法は、化学物質の「有害性」と「ばく露情報」の組み合わせに基づいてリスクを評価し、必要な管理対策の区分(バンド)を示す方法です。
特徴としては、労働者のばく露濃度等を測定しなくても使用でき、許容濃度、ばく露限界値等がなくても使用できます(化学物質の有害性情報は必要です)

手順を説明します。

1.厚労省ホームページの「職場のあんぜんサイト」を開きます。

2.画面右側に化学物質の欄があり、その最下部付近に、「リスクアセスメント実施支援システム」の項目がありますので、これをクリックします。

3.コントロール・バンディングの画面が開き、概要説明があります。
液体又は粉体を扱う作業が上段に、鉱物性粉じん・金属粉じん等の生ずる作業は下段に「リスクアセスメント開始」のボタンがありますので、ここをクリックします(28/3より)。
ここでは、上段(液体・粉体)をクリックした場合で説明します。

4.ステップ1(リスクアセスメントを行う作業)が開きます。
ここでは、タイトル、担当者名、作業場所、作業内容※ 作業者数※ 液体・粉体※ 化学物質数※ を記載・チェックします(※印は必須項目)
終われば、右下の「次へ」をクリックします。

5.ステップ2(作業状況)が開きます。
ここでは、以下の項目を入力(記載・チェック)します。

政令番号: 化学物質名称※
右側の「一覧から選択」をクリックしますと、リスクアセスメントの義務物質640が、五十音順に並んで表示されますので、該当物質をクリックし、「反映」ボタンを押します。
「反映」ボタンを押すことで、次の入力項目のGHS分類区分※、沸点※、に反映されて、これらの項目が自動表示されます。
例えば、アセトンであれば、「生殖毒性」 区分2「吸引性呼吸器有害性」区分2、沸点 56.5℃
640物質以外の物質は、上記項目については、手入力になります。

GHS分類区分※
手入力の場合、右側の「選択」ボタンを押すと、GHS分類区分を入力するための表が開きますので、当該物質のSDSから、有害性の種類毎に有害の程度(GHS分類区分)に、チェックを入れてください。
このGHS分類区分に基づき、リスクアセスメントが行われます。
GHS分類区分は、区分3よりも区分1の方が有害性は高くなります。

沸点※
手入力の場合、当該物質のSDSで沸点を確認して入力します。

取扱温度※
当該物質を取り扱っている温度を入力します。

取扱量単位※
液体の場合は、kL(取扱量ランク:多量) L(取扱量ランク:中量)mL(取扱量ランク:少量)の中から選択します。
連続作業では1日の使用量、バッチ作業では1回の使用量とします。
選択を迷う場合は、より量の多い方を選ぶと、安全側にリスクアセスメントできます。

「GHS分類区分」「沸点」「取扱温度」の入力がないものは評価の対象となりません。
以上の入力が終われば、右下の「次へ」をクリックします。

6.ステップ3(化学物質のランク及びリスクレベル)が開き、化学物質ごとの有害性ランク、揮発性・飛散性ランク、取扱量ランクと、リスクレベルが表示されます。
例えば、アセトンを20℃で、リットル単位の量を取り扱っている場合は、
化学物質名 アセトン 有害性ランク D 揮発性ランク 中 取扱量ランク 中量 リスクレベル 4
眼や皮膚へのリスクがある場合はSも表示します。
内容確認後、右下の「次へ」をクリックします。

7.ステップ4(作業のリスクレベルと対策シート)が開き、その作業のリスクレベルと対策すべき事項が表示されます。
また、レポート及び対策シートがPDFで提供されます。
例えば、リスクレベル4であれば、化学物質の使用の中止、代替化、封じ込めの実施
1)原料の代替化
2)工程の密閉化 など
「レポート」「対策シート400」は、クリックすればPDFで提供されます。

次回に続く

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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