産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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職場の化学物質 よもやま話-17 新型コロナの消毒方法が増えました

2020年06月


先月は、新型コロナの消毒について、次のような説明をしました。
物に付着した新型コロナウイルスは、しばらく(現時点での知見では、エアロゾルで3時間まで、プラスチックやステンレスの表面で72 時間程度)生存しますので、ドアの取手、ノブ、手すり等、身の回りの共有の物の接触面は、次亜塩素酸ナトリウム、アルコール等で、拭いて消毒しましょう。
また、日常使っているものでも、使い方を間違えると身体に重篤な影響を及ぼすことがあります。
特に、家庭用塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を用いた消毒液を使用する場合は、次のような注意が必要です。

(1) 皮膚への刺激が強いため、直接触れないよう、必ずビニールなどの手袋を使用して下さい。

(2) 手指消毒には使用しないでください。

(3) 消毒液の噴霧(スプレー)は不完全な消毒やウイルスの舞い上がりの可能性があるため避けてください。

(4) 加湿器に入れて空間を消毒しようとしたり、マスクに噴霧して使用する等は、絶対にしないでください。

(5) 酸性の強い洗剤と混ぜないでください。有毒なガス(塩素)が発生します。

今月は、アルコールと次亜塩素酸ナトリウム以外の消毒剤について説明します。
先月に説明したように、新型コロナウイルスはエンベロープ(脂質の二重膜)を持つウイルスなので、アルコールや界面活性剤等で処理すると破壊し、不活化できます。
界面活性剤は、石けんや住宅家具用洗剤、台所用洗剤等に含まれています。
現在、製品評価技術基盤機構(NITE・ナイト)が、アルコール消毒液の代替となりそうなものについて、有効性(注)を検証しており、その結果が適時発表されています。

(注) 身の回りの物品(例→手すり・ドアノブ)の消毒が目的であり、手指消毒や空間噴霧等は、評価の対象外です。
消毒用アルコール以外の選択肢を探すために実施されています。
6月14日時点では、5月29日(第4回検討委員会の結果)が最新の発表です。
この内容は、

1. 界面活性剤について
第3回・委員会で有効と判断された5種の界面活性剤に加え、新たに2種の
界面活性剤が有効であると判断されました。
これにより、有効と判断された界面活性剤は、次の7種となりました。
(1) 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
(2) アルキルグリコシド(0.1%以上)
(3) アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
(4) 塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
(5) 塩化ベンゼトニウム(0.05%以上) → 今回追加
(6) 塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01%以上) → 今回追加
(7) ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)

これだけでは、どの洗剤(具体的な商品名)を使えばよいのかわかりませんので、「効果が確認された界面活性を含む洗剤等のリスト(6月10日版)」が、ホームページに公表されていますので、ご家庭にある洗剤に、どの界面活性剤が使われているか確認してください。
なお、このリストに掲載されていない製品にも、有効と判断された界面活性剤が含まれている可能性があります。
製品の成分表や製品のウェブサイト等を参考にしてください。

また、具体的な使用方法については、以下の資料が公表されていますのでご覧ください。
「新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう」 経産省、厚労省
「ご家庭にある洗剤を使って身近な物の消毒をしましょう」 経産省

2. 「次亜塩素酸水」(注)について、
(注) 「次亜塩素酸水」は、電気分解等の手法で作られる酸性の液体です。
「次亜塩素酸ナトリウム」は、塩素系漂白剤等の主成分でアルカリ性の物質で、従来から消毒剤として使われているものです。
似たような名前ですが、これらは別のものですので、混同しないようにしてください。
「次亜塩素酸水」は、第4回・委員会では、有効性の有無の判定に至らず、引き続き検証試験を実施することとされました。
これは、「次亜塩素酸水」は、塩素濃度や酸性度(pH)等の条件によって効果が変化しうるため、評価にあたっては、様々な条件での検証を行う必要があるためです。
本検討委員会では、「次亜塩素酸を主成分とする酸性の溶液」を統一的に評価することにしており、現時点では、全体として有効性評価を行う上で十分なデータが集まっていないことから、引き続き検証試験を実施することとされました。

(経産省・関連資料)
次亜塩素酸水についての下記の「ファクトシート」(情報を記載した報告書)は、その販売実態や空間噴霧をめぐる事実関係を、現時点(6月9日)までに得られた情報に基づいて経産省が「まとめた」ものであり、経産省やNITEの見解を示すものではありませんが、参考になります。
「次亜塩素酸水」等の販売実態について
「次亜塩素酸水」の空間噴霧について

このファクトシートに記載されている内容の1例
有人空間への噴霧について、国内外の評価に関する情報の概要では、

(1) WHOの見解
噴霧や燻蒸による環境表面への消毒剤の日常的な使用は推奨されない。
消毒剤を人体に噴霧することは、いかなる状況であっても推奨されない。
これは、肉体的にも精神的にも有害である可能性があり、感染者の飛沫や接触によるウイルス感染力を低下させることにはならない。

(2)米国疾病予防管理センター(CDC)の見解
医療現場の消毒に係る一般論として、消毒剤噴霧は、空気や表面の除染のためには不十分な方法であり、一般感染管理には推奨されない。

(3)中国国家衛生健康委員会の見解
新型コロナウイルス対策に係る消毒薬ガイドラインにおいて、「人がいる状態で空間・空気に対して消毒を行うべきではない。

現状では、消毒液を空間に噴霧して空間に漂うウイルスを不活化する方法は、確立されていないため(不十分なため)、推奨されていません。
噴霧した消毒液と空気中に漂うウイルスが空気中で出会う確率が非常に低いためと考えられます。
また有人空間で行うと、人が消毒液を吸引して健康障害を起こす可能性もあります。
消毒液の空間噴霧が、「換気」によるウイルス排出や、「3密」回避による感染防御よりも有効とする報告は、現状では「ない」とのことです。

今一度、職場やご家庭の新型コロナウイルス対策の見直しをしてみましょう。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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